山本国際結婚相談所
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■国際認知・離婚(04年10月新設、06年4月全面改訂、07年1月第2次改訂)
(1)フィリピン人夫婦の離婚
(2)婚外子の国際(渉外)認知
(3)認知・偽装認知・準正・国籍取得('06/12更新にて新設)
(設問1)フィリピン人夫婦の離婚
設例  日本人男X(独身)はフィリピンパブでフィリピン人女Yと知合って結婚することになったが、Yにはフィリピンにフィリピン人夫Zがいることが分かった。Zは家出して別の女と再婚しているという。Yは、Zはすでに再婚しているので、自分の再婚に問題ないというがXは一抹の不安がある。X,Yは結婚できるのか。
回答  1: まず、Zがすでに再婚しているというのが問題である。フィリピン人同士は離婚できないので※(注1)、再婚といっても事実上の重婚である※(注2)。フィリピンには戸籍の制度が無い(日本のような厳格な戸籍制度は日本と朝鮮、台湾、中国しかない)。だから黙っていれば結婚許可証(Marriage Lisence)が発行され、重婚は可能である。このようなことは少なくない。Zもこれであろう。或いは、結婚手続きはせずに内縁関係かもしれない。この例も少なくない。⇒立法者はカトリックの教義に忠実に従って離婚を禁じた。立派だと思うが、現実にそれでいいのかが問題である。
  また、実際はY、Zの婚姻は破綻してなくてYの仕送りでZ、子供、一族が生活していることが多い。Xに貢がせるために嘘を言っていることが多いので注意が必要である。小職はお見合いの仕事もやっているのでよくフィリピンに行くが、妻が日本のフィリピンパブで働いて仕送りをしており、夫・子供はそれで生活(夫は無職)という家庭を少なからず見ている。
 2:本件では、YがZを相手に婚姻無効の訴えを起こし婚姻無効判決を取れば(annulment)(比家族法36)、民事登録所に登録され(比家族法52)、その後Yは再婚できる(比家族53)。判決までに1年近くかかり、一度は原告Yの聴聞もあるのでYは一旦帰国しないといけないであろう。Yが超過滞在(オーヴァーステイ)であったりすると次に日本に来るときに上陸拒否期間(原則5年間)※(注3)の問題があるが、この点は弊サイト「偽装結婚の法律研究」の(2)の設例に対する回答3.「(5年間の上陸拒否)」の所に詳しく解説している。また、Yの再婚禁止期間の問題もあるが、これについては、詳細は同じく弊サイト「国際結婚の法律研究(2)女の離婚・再婚、再婚禁止期間」の所の解説参照。
 本問では超過滞在はなくYは裁判の聴聞のために帰国し、そのままフィリピンにいるとして以下論じる。プロモーションとの契約もちょうど切れたと仮定する。
 なお、フィリピンでの結婚手続きについては、弊サイト「国際結婚の法律研究(3)フィリピン人との結婚手続き」に手引き販売のお知らせをしているので利用されたい。
※(注1)※
 わが国の裁判所がフィリピン家族法の規定自体を法例33条により公序良俗違反とすることはできない。Y,Zがともに日本に生活しておりフィリピンとのつながりが希薄であるといった事情があれば(例;夫婦とも永住の在留資格があり今後も日本に在留するつもりで、フィリピンには特別な利害関係は無い)、我が法例33条(公序良俗違反の外国法の適用排除)によりフィリピン家族法・民法を排除し、日本民法によりY,Zの離婚を認める余地がある(木棚照一編「演習ノート国際私法」改訂第2版法学書院2004年P.40,41、松岡博・岡野祐子執筆)。本問ではそのような事情はない。Y,Zの離婚を認めない結果がわが国の公序良俗に反するかどうかが問題なのであって、離婚を認めない法制自体を問題にするのではないのである(山田りょう一「国際私法第3版」、有斐閣2004年P.448、折茂豊「国際私法(各論)(新版)」昭和47年、有斐閣P.299,300)。

※(注2)※
 たとえMarriage Lisence の申請書の公示期間中(10日間)に異議が出されても、地方民事登録官(Local Civil Registrar)が裁判所の差し止め命令を申請・取得しなければ、結局Marriage Lisenceを発行しなくてはならない(比家族法18)。この差し止め命令の例を小職は寡聞にして知らない。

※(注3)※
 入管5条1項9号ロ,ハ,ニ;悪質10年間、出国命令該当者1年間、通常5年間
   3:日本で婚姻無効判決を取れないか?
Q1; 1年近くかかるというのではX,Yとしても何時結婚できるか分からないので、日本で裁判を起こしてもっと早く判決をもらえないかと思うのでは。
A1;  その気持ちは無理もないことです。この裁判は弁護士に金をばらまくようなものです。判決文を読んでも(弊職は翻訳を何件かやっています)定型的な文章(長文ではあるが)でこんなものにどうして1年以上の期間、多額のお金(弁護士報酬)(50,60万円以上。フィリピンでは上級サラリーマンの年収)がかかるのか!もっと安価に早期に判決が出れば事実上の離婚状態にある多数の国民が救われます。これができないことによる精神的・経済的損失は計り知れません。ただ日本で裁判を起こすのは問題があります。この点は従来稿では触れてなかったので今回('07/1更新)説明します。
Q2; それはどういうことか。
A2; 国際裁判管轄権の問題です。一般には被告Zの住所国(フィリピン)に裁判管轄権がある。ただ、原告Yが遺棄されたとかZが行方不明その他これに準ずる場合はわが国裁判所にも管轄権がある(最判昭39・3・25判時366・11)。また、フィリピンで訴訟を起こすにつき法律上・事実上の障害があるかどうかも考慮される(最判平8・6・2民集50・7・1451)。 そこで本件の場合ですが、Zは従来の住所を出て行って帰らないということですが、Yも今は日本に居て、従来の住所にはいない。しかも在留資格は興行で3,6ヶ月しかないので日本に居所はあっても住所があるとは言い難い。単にフィリピンの訴訟が1年近くかかる、高いというのでは、「フィリピンで訴訟を起こすにつき事実上・法律上の障害がある」とはいえないのではないか。
Q3; それは「事実上の障害がある」といえるのではないか。このサイトの■偽装結婚の法律研究の(3)子供が生れたらの4.(胎児認知)の説明文Bには類似の訴訟(嫡出否認)の説明があるが、日本で訴訟(家事審判)をやったほうがずっと安く、短期間でできる(家審法23条の審判)。これを救済することこそ国際私法生活における正義公平の理念に合致するのではないか。
A3; そうもいえますが、仮に日本の裁判所で婚姻無効判決が出てもフィリピン法で認められるかの問題もあります。フィリピン法で認められなくてはYに対して婚姻要件具備証明書(フィリピン総領事館発行)が出ないので、X,Yは日本で結婚できないことになる。
Q4; その点は裁判の前にはっきりしておかないといけないが。
A4; フィリピン総領事館(大使館)に聞けばいいが、面倒くさい(難しい問題なので)のでだめというかもしれません(一般に彼らの執務態度は良くない)。裁判の判決が出てから聞いた方が良い結果になるかもしれません(ちゃんと検討する)。何れにせよ、X,Yよく相談の上決めてください。

(設問2)婚外子の国際(渉外)認知
設例 (設問1)でX,Yは同棲していたので、Yがフィリピンに帰国し、婚姻無効判決が出る前に子Cがフィリピンで生まれた。XはCを認知しCの在留資格(日本人の配偶者等)を確保し、それから婚姻無効判決後Yと結婚したいと考えている。可能であろうか。
回答  1:Y,Z婚姻中にCが生まれたのでCはYZの嫡出子の推定を受け(比家族法164@)Xの認知は受理されない(日法例17@)。因みに婚姻無効判決の後に生まれた場合でもCはYZ間の嫡出子である(無効婚子の嫡出付与規定、比家族法54、日法例17@))。Cには日本の在留資格が無いことになる。Cを在留資格認定証明書で日本に呼び寄せることはできない。但し、短期滞在ビザで可能かは別問題である。
 2:母親Yがフィリピン人だからCはフィリピン国籍である(比憲法第4節第1条第2号)。フィリピン在留に問題はない。さて、真実の父親はXだから、表見的父親Zが嫡出否認の訴えを起こし(比家族法170)、それが認められればCは非嫡出子となりXによる認知は可能である。その訴訟はZがCの出生を知ってからまたはCの出生登録から1年以内でなくてはならない(比家族法170@)。Cからは法文上は起こせないように思われるが、これを認める見解がある(Jose N. Nolledo教授、この方はフィリピン憲法の起草委員の1人。詳細は弊サイト「偽装結婚の法律研究(3)子供が生まれたら?の回答3.(嫡出性の排除)」の部分をご覧いただきたい)。故に試しにCからZに嫡出否認の訴えを起こしてみることである。
 3:上記2でXがCを認知し、婚姻無効判決も出ておればX,Yは結婚し、婚姻準正によりCは日本国籍を取得できる(国籍取得の届出、国籍法3@)。Cが日本国内にいる必要はない(戸籍法102条1項参照)。
 4:また、以上とは別に、仮にC出生後3ヶ月以内にZが嫡出否認の訴えを起こし、嫡出否認の判決の確定後14日以内にXがCの認知届けを提出すれば、特例的にCは日本国籍を取得できると考えられる(最高判平9・10・17民集51巻9号3925頁)(平10・1・30民五第180号法務省民事局長通達)。尚、期間の点については、本件が海外案件であることを考慮して相当の延長が認められるのではないかと思う。何時まで延長が認められるかは今後の判例の積み重ねを待たねばならない。これに関連して最高判平15・6・12(判例時報1833号、P.37頁以下)は、帝王切開による出産のための療養・夫の所在不明のため、子の出生後親子関係不存在確認の訴えの提起に8ヶ月余を要し、親子関係不存在確認の判決の確定した4日後に認知届が出された場合に、生まれた子に日本国籍を認める。
※(注4)※
あきらめないことである。

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(3)認知・偽装認知・準正・国籍取得('06/12更新にて新設)
(設問3)非嫡出母子関係と国籍
設例 日本人女Xはフィリピン人男Yと知合い子供Zを出産した。Yは姉が日本人と結婚していたので親族訪問の短期滞在ビザで来日しスナックで雑用係として働いている。現在は超過滞在である。Xはそのスナックのホステスであった。2人は結婚していない。Zの国籍は、Yは日本在留できるのか?
回答  1:フィリピン人の親族訪問の現状
フィリピン人が日本で結婚している親族を訪問する例は多い。フィリピン人妻が日本で出産しその世話で母親・姉妹が訪問する例が典型。然しそのほかにも、妻の兄弟・姉妹が親族訪問の名目で来日し、そのまま超過滞在・不法就労になるケースも多い。設問のYはこの例である。フィリピン人妻の夫はこのような依頼があっても安易に身元保証人になってはならない。妻・その家族に法を守るように諭すべきである。以下の表にあるように、フィリピン人の短期滞在のビザの目的は親族訪問が一番多く、全体的傾向(観光が一番多く、商用がそれに次ぐ。それゆえにこそ短期滞在ビザのことを世上、観光ビザと呼ぶのである。)とは異なっている。表は、法務省入国管理局編「平成18年版出入国管理」(株)アイネット発行のP.11,12より筆者が作成した。

表1:平成17年の在留資格「短期滞在」の新規入国者数の目的別内訳
総数;574万8380人
観光 商用 親族訪問 その他
354万6194人 137万9874人 40万9858人 39万1356人
61.7% 22.5% 7.1% 6.8%

表2:表1の内、フィリピン人69285人の目的別内訳
親族訪問 商用 観光 その他
40281人 15704人 10457人 2843人
58.1% 22.6% 15% 4.3%
 2:Zの国籍
X,Yは結婚しておらずZは非嫡出子であるので、準拠法は、父子関係はフィリピン法、母子関係は日本法である(法例18条)。フィリピン法は認知を要せず出生の事実により当然父子関係が生じる(事実主義)(フィリピン家族法175条)。よってZはフィリピン国籍を取得する(フィリピン憲法第4節第1条2号)。日本法は認知を要するが(日本民法779条)、母子関係については分娩の事実により当然発生する(最判昭37・4・27民集16・7・1247)。よってZは日本国籍も取得する(国籍法2条1号)。Zは日本で出生しているので国籍留保の意思表示は必要ない(国籍法12条)。フィリピン国籍を確保するためには出生届の受理証明書(市町村役場)を取ってそれをフィリピン総領事館(大使館)に出す。フィリピン国内の国家統計局NSOには総領事館から連絡が行く。
 3:Yの日本在留
YがZを扶養しているのであれば、法務大臣の在留特別許可を貰って日本在留する道がある(入管法50条1項4号)。X,Yが結婚してX,Y,Zが同居している方が確実である。⇒弊所では、「在留特別許可の手引き(A4版4枚)」、「日本でフィリピン人と結婚する手引き(A4版6枚)」何れも3000円、PC送信可、郵送は送料200円を販売している。実務を通じた貴重な情報が入っているので是非利用されたい。因みに、「フィリピンでフィリピン人と結婚する手引き(A4版11枚)」も販売している(3000円、送料300円)。日本で最も詳細・正確。
(設問4);偽装認知による国籍取得
設例 日本人男Xはフィリピン人女Yとフィリピンで結婚したが、Yには非嫡出子Z(4歳)がいた。Zを日本に呼ぶために養子縁組をしようとしたが手続きが面倒なので認知(虚偽)をし、その後国籍取得の届出をしZは日本国籍を取得した(認知準正による国籍取得、国籍法3条1項)。Yが法定代理人として在フィリピン日本大使館に国籍取得の届出をした(国籍18条、戸籍102条1項、国籍施行規則1条)。Zは今日本人としてX,Yとともに日本で幸せに暮らしている。どんな問題があるか?
回答
Q1; 先ず、どうしてこのようなことが起こるのか?
A1;  婚外子の日本在留には継父との養子縁組が必要と誤解している方が多い。是が原因です。養子縁組をしても特別養子以外は日本在留に結びつかない(入管法別表第二「日本人の配偶者等」の欄参照)。婚外子(未成年者)は「定住者」(入管法別表第二)で在留できるので、是で在留資格認定証明書を取ればいい。ただ、Zが14、5歳のようなケースでは日本語の習得も難しく日本の中学校についていけない可能性大、日本に呼ばない方がいい。日系ブラジル人の子供で日本の学校について行けず不登校・不良化のケースが多い。気をつけて欲しい。本問ではZはまだ4歳であったので日本の生活に溶け込めたのである。
Q2; Zの日本国籍は有効なのか?
A2; 当然無効です。認知は真実の父子関係がない以上無効である(民法786条)(最判昭50・9・30家月28・4・8)。認知・準正に基づいた国籍取得の届出を受けたフィリピンの日本大使館は届書・添付書類の成立または内容について疑義が生じた時は現地で実態調査することになってはいる(昭和59・11・1第5506号民事局長通達、改正;平成6年10月13日民五第6500号通達の「第一3受付後の調査」)。然し、膨大な査証業務その他の業務に忙しい大使館員がZの所まで赴いて父親は誰かとか調査は事実上不可能だし、仮に可能としてもそのときだけ口裏を合わせるのは分けない事である。然し、事実に符合しない認知は無効なので、それに基づく国籍取得の届出も無効である。誤って受け付けられても無効に変わりはない(木棚照一「逐条註解 国籍法」日本加除出版 平成15年P.231頁)。また、以上の行為は刑法157条(公正証書原本不実記載罪)に該当し、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられるべき行為である。許されないことは言うまでもない(ただ、実際にどこまで立件されているのかは筆者には不明)。
Q3; ではZは退去強制になるのか。
A3; A1で述べたように「定住者」で在留できる。本来最初からそうすべきであったのにX,Yの不手際で日本在留資格のない状態になったのだから、法務大臣の在留特別許可(入管50条1項4号)で在留が認められるのではないか。⇒この場合には弊所では、「在留特別許可の手引き(A4版4枚)」3000円、送料200円を販売しているので利用されたい。実務を通じて得た貴重な情報が入っている。市販の本にはない。
Q4; 設問では今みんな幸せに暮らしているということだから、このままにしておいたらどうか。
A4; そうなると実は大変なことになる。認知の無効はまず裁判で宣言する必要がある(形成無効)。他の問題(Zの日本国籍取得の無効)の先決問題で主張(確認無効、民法学者の多数説ではあるが)はできない。「ソノ認知ノ無効ナルコトヲ宣言スル判決アリテ始メテソノ認知ハ当初ヨリ無効トナル」(大判大11・3・27民集1・137)。そうなるといったい誰が認知無効を裁判所に訴えるのか。認知者Xは現在の生活を破壊されたくないのでしないであろう。Yも同様。すると、国(検察官)が「その他の利害関係人」(民法786条)としてX,Zを相手に認知無効の訴えを提起しなくてはならない。そのようなことは実際上ありえないのではないか。爆弾を抱えたまま月日がたっていく。Zが大人になってある日突然真実が明らかにされたらどうするのか?その時になってフィリピンに帰ってもフィリピン語は分からず友人もいない、生活できないのではないか。なお、仮想認知は当然無効であり、認知無効の裁判を経ることなく直接戸籍法113条もしくは114条により家裁に戸籍訂正の申し立てができるという裁判例がある(札幌家審昭46・2・27家月23・11=12・118)。また、無効が明白・重大な場合も戸籍法113条により戸籍訂正できるという裁判例がある(熊本家玉名支審昭41・9・22判時480・52)。何れも確定判決を経ずに戸籍訂正ができるという例であるが、国が直接国籍取得の無効を宣言できるという例ではない。
 

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